会社法が変わるひと昔前までは、取締役が3人と監査役が1人の合計4人いなければ株式会社を設立することが出来ませんでした。しかし、平成18年5月の会社法改正によってこの制度は廃止され、今ではたった1人でも会社を設立することができるようになりました。

 

それなら、1人で株式会社を立ち上げてビジネスをやりたい!

 

そう思った方のために、このページでは1人で株式会社を設立する際のポイントを確認していきましょう。

 

株式会社と個人事業主の違いはなに?

まず、一人会社設立を考えている方のために個人事業主とはどう違うのかを解説していきます。

 

開業・廃業時のお金が違う

個人事業主となるには、事業をおこなう事務所となる場所を管轄する税務署に開業届を提出するだけでかまいません。個人事業を廃業するときも同様に廃業届を税務署へ出すだけです。

対して株式会社を設立するには、例え1人会社であっても設立費用として20万から30万円ほどのお金が必要になります。さらに会社をたたむときもお金がかかります。

 

他人に与える印象が違う

他人に与える印象が違うというのは、単純に会社の社長は個人事業主よりエラく見えるということではありません。個人事業主でも貫禄のある人はたくさんいます。

ここでいう他人に与える印象とは「信頼度」のことです。株式会社は対外的に信頼という点で個人事業主に勝ります。

 

例えば、楽天やヤフーショッピングなどで通販をするとき販売者を確認したとき、個人の名前が記載されているより株式会社の名前が記載されている方が安心できますよね。これは会社ということで信頼度が上がるからです。

取引先との取引においても、大きな取引先であればあるほど、法人であることが取引の条件になっていたりすることはよくある話です。

 

ちなみに、銀行などの融資を受けるときに契約者を株式会社とし、保証人を株式会社の代表者にすることもできるので、第三者の保証人を頼まなくてよくなるという利点もあります。

 

税務や会計が違う

個人事業主は売上がなければ基本的に税金を納める必用はありません。しかし、個人事業主は売上が大きくなっていくにつれて納める税金(所得税)が大きくなります。

それに対して株式会社は納める税金が法人税となりますので、売上が0円でも税金を納めないといけません。しかし、売り上げが大きくなっても、利益の状況によっては法人税の方が所得税より安くなることも多くなります。

生命保険を使った法人向け節税商品も販売されているため、株式会社の方が圧倒的に節税のメリットを受けやすくなります(個人事業主は大きな節税対策は取れないと思ってください)。

 

また、株式会社を設立すると会計処理が複雑になり税務申告などの提出書類が一気に増えます。日々の仕訳や税務申告は複式簿記という複雑怪奇な処理を行わないといけません。

 

今まで何とかご自身でやってこられた方も経理の経験などがないと、独りの力でこなすのはかなり難しいでしょう。

 

税務調査を受けることも個人事業主と比べると株式会社の方が多いようです。これに関しては株式会社のほうが一般的に事業規模が大きいため重点的に行われる傾向にあるからです。(個人事業主だから税務調査が少ないということではありません。個人事業主であっても事業規模が大きくなれば税務調査を受ける回数も自然と増えていきます)。

1人会社だから税務署がおおめに見てくれるということもありません。

 

社会保険の加入が義務になる

株式会社の場合、たとえ従業員がいない社長1人の会社だとしても社会保険=厚生年金保険と健康保険に加入しなといけません。

社会保険は保険料が高いというイメージを持たれる方も多いかと思います。実際に自営業者などが加入する「国民年金・国民健康保険」の方が保険料が安くなりますが、社会保険は国民年金・国民健康保険よりも格段に保証が手厚いのも事実です。

 

ただし、1人会社を設立したら社会保険に自動加入というわけではないので設立後にお客様自らが加入手続きを行う必要があるので注意してください。

 

 

1人会社の資本金について

次に資本金についてポイントを解説します。

 

平成18年の会社法の改正により株式会社設立には資本金が1,000万円必要だった制度も廃止され、資本金が1円からでも株式会社を設立することができるようになり、より1人でも会社設立がしやすくなりました。

実際に「資本金は1円でも株式会社の設立できます」と、会社設立に関する本やウェブサイトによく書かれています。これは間違いではありません。

 

しかし、資本金1円で株式会社を設立したものの、いざ会社名義の口座を作ろうとしたら、資本金1円では銀行口座が開設できないという銀行もあったりします。なぜならば、資本金は会社の運転資金であると同時に、第三者にとってはあなたの会社の社会的信用を示すものとして見られてしまうのです。

以上の事を考えると、1人会社設立の際の資本金は慎重に決めないといけないので気を付けてください。

 

もしも、取引先様の指定口座が開設できないことになってしまったら、資本金を増やすための手続きなどを行わなければならず、更に費用と時間がかかることを覚えておいてくださいね。

 

 

1人会社設立の流れの解説

最後に1人会社設立の流れを会社の設立前と設立後にわけて、ポイントを絞って解説したいと思います。

 

1人会社を設立するときの流れ

株式会社を設立する場合は、1人会社でもそうでなくても、時間と労力のかかる多くの工程を経る必用があります。具体的には以下のとおりです。

  1. 会社名や事業の内容などといった基本的な項目の決定。
  2. 「市役所」に行き個人の印鑑の実印登録。
  3. 会社印をつくる。
  4. 会社の定款を作成し、定款の認証をしてくれる「公証人役場」で定款の認証をしてもらう。
  5. 「銀行」へあらかじめ決めておいた会社の資本金の払い込み。
  6. 株式会社の設立に必要な書類の準備。
  7. 書類作成後、管轄の「法務局」へ提出。
  8. 会社設立登記の完了

 

ここまで見て頂いてわかる通り会社を設立するためには、銀行や多くの役所へ行かなければなりません。

そして作成・提出する書類も多岐に渡りきちんと揃えなければなりません。1人でこれらを行うのはかなりのパワーを必用とします。

 

1人会社設立後の流れ

1人会社を設立しただけでは残念ながらまだ営業は出来ません。早く営業を始めるためにも1人会社を設立した後にやらなければならないことがあります。

1人会社を設立したあとにおこなうことは下記のとおりです。

  1. 書類を提出した「法務局」で印鑑証明書と履歴事項全部証明書を取得。
  2. 「税務署」へ開業届などの提出。
  3. 「市区町村役場」へ開業届の提出。
  4. 「県税事務所」へ開業届などの提出。
  5. 「年金事務所」へ社会保険の加入書類提出。
  6. ビジネス上の取引をするための法人口座の開設。
  7. 会社名義のクレジットカードの発行に手続き(必須ではありません)。

など。従業員のいない状態で1人会社を設立した場合は、これらの手続きを1人で行う可能性が高くなります。申請前より更に行く場所も増えるので多くの時間とパワーが必要になります。

 

 

まとめ

1人会社設立や設立後の手続きについて初めて知ったということも多かったのではないでしょうか。そして、設立時や設立後もやらなければならない事の多さ、行かなければならない場所の多さにもおどろいた方も多いと思います。

1人でも会社設立をしたいけど、大変そうだと感じられたかたはぜひアクセス便利な「名古屋駅前の行政書士事務所シフトアップ」にご相談ください。シフトアップではお客様の不安を取り除き、会社設立のハードルを下げるために全力でサポートいたします。